【徹底解説】特別一般包括許可(安全保障輸出管理試験(STC Advanced)対策)

安全保障輸出管理実務能力認定試験
今回の記事は次のような方におすすめです。

・安全保障輸出管理実務能力認定試験の試験勉強中の方(特にSTC Advancedの合格を目指している方に最適)
・輸出管理の実務に携わっておられる方などで輸出管理の概要を確認したい方

安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)の試験範囲である『特別一般包括許可』の内容を徹底的に解説していきます。

まとめて輸出許可申請が可能な包括許可は個別許可と比較して手続きが簡易的であり要する時間も短時間で済むことから実用的な許可制度となっています。

包括許可は数種類ありますが、包括許可の中でも特に実務上使用することが多く試験でも問われやすい制度が特別一般包括許可です。とても大切な分野ですのでしっかり理解していきましょう。

個別許可と包括許可の全体について確認したい方はこちらも合わせてご覧ください。

それでは早速、解説に入ります。

特別一般包括許可

特別一般包括許可について申請者の要件、適用範囲、有効期限、資料の保存期間、失効・報告・届出に区分して解説していきます。

特別一般包括許可の申請者の要件

特一包括の申請者は次の全てに該当している必要があります。

  1. 特定手続等運用通達に定めるところにより電子申請を行う者
  2. 輸出管理内部規定の整備と外為法などの遵守事項の確実な実施に関して、安全保障貿易検査官室から輸出管理内部規定受理票及びチェックリスト受理票の交付を受けている者
  3. 外為法等遵守事項の実施状況について、安全保障貿易検査官室による実地の調査を受けている者
  4. 輸出管理内部規定に基づき内部審査を実施した上で、貨物の輸出又は技術の提供を行なったことがある者

これらの申請者に課せられた要件を見て想像がつくかもしれませんが、かなり厳しい要件となっています。特別一般包括許可の申請者となるためには非常に多くの労力と時間がかかりますが、一度要件を満たした場合は、その後の輸出許可の手続きが楽になりますので、輸出の件数が多い企業等にとってはメリットが大きいです。

要件の2〜4は一連の手順になっています。わかりやすいように噛み砕いて説明すると、

まずは、社内で輸出管理の規則(輸出管理内部規定)を作ります。それを経済産業省 安全保障貿易管理課 安全保障貿易検査官室に提出して、合格すれば、輸出管理内部規定受理票がもらえます。

次に、企業の概要や輸出管理状況について記入した輸出者等概要・自己管理チェックリストを同じく安全保障貿易検査官室に提出します。合格したら、チェックリスト受理票がもらえます。

輸出管理内部規定受理票とチェックリスト受理票について 引用:経済産業省HP

経済産業省への届出制度(任意)があり、規程の内容が適切であれば、輸出管理内部規程受理票(CP受理票)が発行されます。 

 また、輸出管理内部規程受理票が発行された方は、毎年7月に輸出者等概要・自己管理チェックリスト(CL)を提出しなければなりません。 
規程に基づく適切な安全保障貿易管理が実施されていれば輸出者等概要・自己管理チェックリスト(CL受理票)が発行され、包括許可制度を活用することができます。

次に、安全保障貿易検査官室の担当官による実地検査を受けて外為法遵守事項が守られているかの確認を受けます。そして企業で作り上げた輸出管理体制のもとで輸出管理の内部審査の実績を積み上げます。

といった一連の流れになっています。このように申請者の条件をクリアするのにも一苦労です。

なお、輸出管理内部規定や遵守事項については別の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。こちらからどうぞ

特別一般包括許可が適用できる範囲

『輸出令別表第1の2〜15までの項の貨物』と『外為令別表の2〜15の項の技術』と大きな範囲が示されていますが、この中でさらに細かく適用できる範囲が決められています

貨物と技術についてそれぞれ解説していきます。

貨物の場合

貨物の輸出で、特別一般包括許可が適用可能か否かを調べるためには、包括許可取扱要領の別表Aを確認する必要があります

この別表Aは、貨物の種類ごとに、仕向先地域へはどの包括許可が適用できるかが表になっています。実務で行う場合は、輸出品目と仕向地を確認して、別表Aを見て、どの包括許可が適用できるかを明らかにできます。

その他、『返送に係る輸出』の場合に特別一般包括許可を利用することができます。例えば、日本に輸入された貨物で不具合などの理由で輸出する場合です。

輸出令別表第1の2〜15項の貨物の輸出であり下のいずれかに該当する場合は適用が可能です。

  • 日本から輸出された貨物の評価、検査、修理又は交換のために輸入された貨物の輸出
  • 日本に輸入された貨物の種類、品質、数量等が契約の内容と相違する等輸入者の予期しなかったものであるために行われる返送のための輸出
  • 該当貨物の分析、評価等のために無償で一時的に日本に持ち込まれた貨物の返送のために無償で行われる輸出であって、その輸入の許可の日から1年以内に行われるもの

輸出令別表第1の各項の貨物を確認したい方はこちらからどうぞ。

さらに『返送に係る輸出』を行う際は、輸出に先立ち下記の全ての書類を作成・入手することになっています。

  • 輸出者の作成する、当該輸出が返送に係る輸出であることを証する書類
  • 返送される貨物の輸入許可通知書又はこれに代わる税関の証明書
  • 返送される貨物が輸入された際のインボイス、B/L(船荷証券)、AWB(航空貨物運送状)又はパッキングリストのいずれか一つ

技術の場合

技術の提供で使用できる包括許可を確認するには、包括許可取引要領の別表Bを使います。別表Bで「特別一般」と表記された技術と提供地の組み合わせとなる取引を確認します。

包括許可取引要領の別表Aが貨物、別表Bが技術になっています。

特別一般包括許可の有効期限

有効期限は、有効になった日から3年を超えない範囲内で経産大臣が定める日までとなっています。

個別許可の有効期限が6ヶ月ですので、比較すると長い有効期限が設定されています。

資料の保存期間

特一包括で貨物の輸出、技術の提供を行った際の資料は保存する必要があります。

  • (貨物)輸出令別表第1の2〜4  7年間
  • (貨物)輸出令別表第1の5〜15 5年間
  • (技術)外為令別表   2〜4  7年間
  • (技術)外為令別表   5〜14 5年間
  • 返送に係る輸出          7年間

特別一般包括許可の失効、届出、報告要件

軍事用途に使う場合や軍関係機関との取引などは、特一包括が失効したり、事前の届出が必要だったり、取引後に報告が必要だったりします。様々なパターンがありますので下に表でまとめています。

仕向地核兵器等の開発等その他の軍事用途
用いられる場合輸出令別表第3の地域失効報告
上記以外失効失効
用いられるおそれがある場合輸出令別表第3の地域失効
上記以外失効
用いられる疑いがある場合輸出令別表第3の地域届出報告
上記以外届出届出
包括許可取扱要領の別表3の(7)
輸出令別表第3に掲げる地域以外
輸出される貨物(提供される技術)の需要者(利用する者)が軍もしくは軍関係機関またはこれらに類する機関である場合届出
輸出令別表第3の国

別表第3の国は、アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国


今回は、『特別一般包括許可』について解説しました。

試験で特に出題されやすいのでしっかり押さえましょう。

なお、本サイトでは他にも安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)の試験範囲の解説記事を掲載していますのでご確認したい方は

>>【完全版】安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)対策(試験概要と試験範囲全ての解説)

をご覧ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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