【徹底解説】無償特例(安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)対策)

安全保障輸出管理実務能力認定試験
今回の記事は次のような方におすすめです。

・安全保障輸出管理実務能力認定試験の試験勉強中の方(特にSTC Advancedの合格を目指している方に最適)
・輸出管理の実務に携わっておられる方などで輸出管理の概要を確認したい方

今回は『無償特例』について解説します。

貨物の輸出規制では、リスト規制に該当する貨物であってもリスト規制に該当しないものとして扱うことができる特例がいくつかあります。その特例のうちの一つである『無償特例』について解説します。

試験でも問われやすいところですので、しっかり理解しましょう。

それでは早速、解説に入ります。

無償特例とは

リスト規制の対象となる貨物を輸出する場合は、輸出許可が必要になりますが、いくつかの特例があり、その特例に該当する場合は輸出許可が不要となります。

実務上、よく使用される特例が無償特例と少額特例で、今回はそのうちの一つである無償特例についてです。

無償特例とは、無償で輸出入する貨物の中で、一定の条件で満たすものは輸出許可が不要となるというものです。

無償というのは貨物の輸出入において互いにお金のやり取り(貨物の売買など)が生じないという意味です。

無償特例に関わらず、輸出許可が不要になる特例においては、適用誤りによって無許可輸出等の法令の違反になるので、間違いないように輸出者が判断する必要があります。

法令上の根拠

法令上の根拠は、輸出令(輸出貿易管理令)第 4 条第 1 項第二号のホとへになります。

以下、輸出令の抜粋です。

(特例)
第四条 法第四十八条第一項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。ただし、別表第一の一の項の中欄に掲げる貨物については、この限りでない。
 無償で輸出すべきものとして無償で輸入した貨物であつて、経済産業大臣が告示で定めるもの
 無償で輸入すべきものとして無償で輸出する貨物であつて、経済産業大臣が告示で定めるもの

ここでいう経済産業大臣が告示で定めるものとは、『輸出貿易管理令第4条第1項第二号のホ及びヘの規定に基づく経済産業大臣が告示 で定める無償で輸出すべきものとして無償で輸入した貨物及び無償で輸入すべきも のとして無償で輸出する貨物』の経済産業省告示のことを指しています。

無償特例は「別表第一の一の項の中欄に掲げる貨物」、いわゆる武器については適用できません

根拠を見るとわかると思いますが、ホとへの2つのパターンが無償特例の対象となっています。その内容についてそれぞれ詳しく説明していきます。

無償特例の細部内容

無償特例の内容についてそれぞれ解説しますが、告示の条文には色々なケースが事細かに記載されています。今回は全て細かく書くと長文になって要点を掴むことができなくなるため、代表的なものを抜粋して噛み砕いて箇条書きにしてまとめました。実務に携わる方は条文を確認してください。

無償で輸出すべきものとして無償で輸入した貨物

まず一つ目のパターンですが、無償で輸出することを前提として輸入する場合です。基本的に輸入するが用が済んだら直ぐに元に場所に輸出する必要があります。

  1. 過去に日本から輸出された貨物で、日本で修理したのちに、また輸出する貨物
  2. 日本で映画撮影するために、映画の作製者と一緒に輸入した映画撮影用の機材
  3. 日本の博覧会などに外国から出品された貨物で、終わったら返送される貨物
  4. 保税展示場で開催された博覧会などに関連する貨物で、終わったら返送される貨物
  5. ATAカルネで輸入された貨物で、ATAカルネで輸出される貨物
  6. 一時的に入国して出国する者が携行しているパソコン等、潜水用具等で本人が使用する貨物 等々

保税展示場とは 引用:税関サイト

外国貨物を展示する会場として、税関長が許可した場所を保税展示場といいます。保税展示場は、国際的な規模で行われる博覧会や公的機関が行う外国商品の展示会などの運営を円滑にするために、外国貨物を関税などを課さないままで、簡易な手続により展示したり、使用する場所として設けられたもの

ATAカルネとは 引用:税関サイト

ATAカルネとは、世界の主要国の間で結ばれている「物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)」に基づく国際的制度による通関用書類のことです。

商品見本や展示用物品、職業用具等の物品をある国に持ち出し、仕事が終わったらその国から持ち出してまた別の国に行く、あるいは日本に持ち帰ってくるといった場合、それぞれの国で通関手続を行わなければならず、また、場合によっては課税されることもあります。

このようなとき、ATAカルネを利用することによって、それぞれの国の税関で、都度、通関書類を作成することなく、また、課税されることなく輸出入通関することができます。

なお、1の日本で修理したのちに再輸出するケースでは、修理自体にお金がかかっても、貨物自体が無償である場合は適用されます。

また、修理とありますが、壊れた部分を直す修理はもちろん、壊れた部分を丸ごと交換するというのも、ここでいう修理に含めます

無償で輸入すべきものとして無償で輸出する貨物

  1. 一時的に出国する者が携行しているパソコン等、潜水用具等で本人が使用する貨物
  2. 他の貨物の運搬に使用する容器で輸出した後に、外国から日本に輸入するもの

ここで注意が必要なのは、修理のために日本から外国に輸出する場合は無償であっても輸出許可が必要なこと、海外の博覧会等への出品の場合も輸出許可が必要なことです。外国から輸入して輸出する場合は許可が不要だったものが、逆のケースだと許可が必要になります。


今回は『無償特例』について解説しました。

なお、本サイトでは他にも安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)の試験範囲の解説記事を掲載していますのでご確認したい方は

>>【完全版】安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)対策(試験概要と試験範囲全ての解説)

をご覧ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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