今回の記事は次のような方におすすめです。
今回は『部分品特例』について解説します。
貨物の輸出規制では、リスト規制に該当する貨物であってもリスト規制に該当しないものとして扱うことができる特例がいくつかあります。その特例のうちの一つである『部分品特例』について解説します。
試験でも問われやすいところですので、しっかり理解しましょう。
それでは早速、解説に入ります。
法令上の根拠
運用通達(輸出貿易管理令の運用について)に『部分品特例』の規定があります。
運用通達1−1(7)を一部抜粋します。一部抜粋ですが長文なので、内容を理解しやすいように、まずは黄マーキング部分だけ読んでください。次に、赤マーキング、青マーキングの順に読んでください。
黄マーキングは、部分品特例の骨幹となる部分で、内容としては、『リスト規制の貨物であっても、他の貨物の一部を構成しており、他の貨物の主の要素でなく、分離できない場合は、リスト規制にはなりません』というものです。
次に赤マーキングは、部分品特例から除外されるものです。要するに部分品特例を使うことができないケースです。
次に青マーキングは、用語の解釈です。他の貨物の部分をなしているとはどういうことか、他の貨物の主要な要素とはどういうことか、などの説明になります。
それでは、個別に解説を加えていきます。
部分品特例の全般(黄マーキング部分の説明)
黄マーキング部分のみ記載します。
輸出令別表第1の1から15までの項の中欄に掲げる貨物(であっても)・・・他の貨物の部分をなしているもの・・・他の貨物の主要な要素となっていない(又は)・・・他の貨物と分離しがたい(と判断されるものは)・・・輸出令別表第1の1から15までの項の中欄に掲げる貨物のいずれにも該当しないものとして扱う。
となります。輸出令別表第1の1から15の項の中欄に掲げる貨物は、『リスト規制の貨物』です。
リスト規制に該当する貨物であっても、いくつかの条件を満たした貨物であれば、リスト規制に該当しないものとして扱うことができるということが記載されています。
ここでいういくつかの条件ですが、
- 他の貨物の部分をなしているもの
- 他の貨物の主要な要素となっていないもの(2と3はいずれか一方を満たせば良い)
- 他の貨物と分離しがたいもの(2と3はいずれか一方を満たせば良い)
が条件となっています。
それぞれの条件の詳しい内容は後ほど(用語の解釈のところ)説明します。
部分品特例が適用できないケース(赤マーキング部分の説明)
部分品特例が適用できないケース(赤マーキング部分)がいくつかありますので、それぞれについて以下で説明していきます。
輸出令別表第1の8項のもの(コンピュータ)で他の装置に内蔵されたもの
輸出令別表1の8の項はコンピュータの項ですので、他の装置に内臓されたコンピュータ関係については10%ルールの適用はできないことになっています。
輸出令別表第1の1の項(3)〜(13)が他の貨物に混合されている場合
輸出令別表第1の1の項は『武器』です。その中の(3)〜(13)の品目が他の貨物に混合されている場合は、部分品特例は適用できません。
輸出令別表第1の2の項(3)が他の貨物に混合されている場合
『輸出令別表第1の2の項(3)に掲げる貨物であって貨物等省令第1条第三号に該当するもの』が他の貨物に混合されている場合は、部分品特例を適用できません。
輸出令別表第1の4の項(6)が他の貨物に混合されている場合
『輸出令別表第1の4の項(6)に掲げる貨物であって貨物等省令第3条第七号に該当するもの』が他の貨物に混合されている場合は、部分品特例は適用できません。
用語の解釈(青マーキング部分の説明)
リスト規制に該当する貨物であっても、いくつかの条件を満たした貨物であれば、リスト規制に該当しないものとして扱うことができるということを説明しました。いくつかの条件は次の通りです。
- 他の貨物の部分をなしているもの
- 他の貨物の主要な要素となっていないもの(2と3はいずれか一方を満たせば良い)
- 他の貨物と分離しがたいもの(2と3はいずれか一方を満たせば良い)
これらの条件の中の用語の解釈について解説します。
『他の貨物の部分をなしている』とは
運用通達の根拠条文の中の注1に、『他の貨物の部分をなしているとは、ある特定の他の貨物の機能の一部を担っており、かつ、当該他の貨物に正当に組み込まれ又は混合された状態をいう。』とあります。
ここで2つのキーワードがあります。一つ目が『機能の一部を担っている』こと、二つ目が『正当に組み込まれている』ことです。
これら二つのキーワードは、装置に必要な機能であり、きちんと組み込まれている部分品であるか否かが問われています。装置自体が機能することに全く関係がなく、詰め込まれただけの部分品は、もはや装置の部分品とは言えないです。
『機能の一部を担っている』『正当に組み込まれている』は、リスト規制品を関係のない装置などに詰め込んで不当に輸出することを防止するための文言だと言えます。
『他の貨物の主要な要素となっている』とは
運用通達の根拠条文の注2に『他の貨物の主要な要素となっているか否か』について記載があります。
主要な要素となっている部分品であれば、もちろんリスト規制として許可が必要ですが、主要な要素となっていない場合は、リスト規制に該当しないものとして扱うことができます。ここで主要な要素か否かはどのように判断するかが問題になってきます。
そこで主要な要素であるかを判断するために、10%ルールというものがあります。
10%ルールとは
メインの装置の価格の10%より小さい場合は、リスト規制品に該当しないものとして扱うことができる。これを10%ルールと言います。
例えば、リスト規制品ではない装置Zがあって、その中にリスト規制品のモーターが入っていたとします。そのモーターが装置Zの機能の一部を担っており、正当に組み込まれていて、装置Z本体価格の10%より小さい価格の時は、モーターはリスト規制品にもかかわらず、該当しないものとして扱えるということです。
モーターを抜き取ってしまうと装置Z本体が使えなくなってしまうので、普通はそのようなことしないですし、たとえ、モーターが目当てだとしてもわざわざモーターの10倍の値段を払って装置Zを買ってまでモーターを手に入れようとは考えにくいでしょう。
他の貨物の中にリスト規制品に該当する部品などが複数ある場合
他の貨物の中にリスト規制品に該当する部分品(部品や付属品)が複数組み込まれているケースについて解説します。
この際は、輸出令別表第1の各項の()の品目ごとに分類して、金額を合計して、10%の枠内に収まっているかを判断します。
例えば、装置Aの中にリスト規制品の部品Xと部品Yが組み込まれており、それぞれの部品が10%ルールを適用できる条件を満たしているとします。部品Xと部品Yは両方とも輸出令別表1の●項(▲)に該当するものであれば、部品Xと部品Yの価格を合計して装置Aの価格の10%内に収まっているかを判断すれば良いです。
『他の貨物と分離しがたい』とは
『他の貨物と分離しがたい』についての明確な規定については、運用通達の根拠条文中の注3に記載があり、『電子部品にあっては、半田付けの状態にある場合』が分離しがたい状態となっています。
それ以外については、判断が難しいことが多いので、案件ごとに経産省等の相談窓口に問い合わせることが推奨されています。
今回は『部分品特例』について解説しました。
なお、本サイトでは他にも安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)の試験範囲の解説記事を掲載していますのでご確認したい方は
>>【完全版】安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)対策(試験概要と試験範囲全ての解説)
をご覧ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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