【徹底解説】仲介貿易取引・外国間等技術取引(安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)対策)

安全保障輸出管理実務能力認定試験
今回の記事は次のような方におすすめです。

安全保障輸出管理実務能力認定試験の試験勉強中の方(特にSTC Advancedの合格を目指している方に最適)
・輸出管理の実務に携わっておられる方などで輸出管理の概要を確認したい方

今回は安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)の試験範囲である『仲介貿易取引・外国間等技術取引』について解説します。

仲介貿易取引と外国間等技術取引は、外国企業間等の取引(貨物・技術)の仲介を邦人の企業等が行うことで、貨物・技術の品目、取引する国によって規制の対象になり許可が必要な場合があります。

STC Advanced試験でも頻繁に問われる分野ですのでしっかりと理解しましょう。

仲介貿易取引

仲介貿易取引というのは、その名の通り、貿易取引を仲介することです。

貿易取引の仲介の中でも特定の要件を満たした場合に経済産業大臣の許可が必要となる仕組みになっています。

では法令上の根拠、許可申請が必要になる要件を解説していきます。

法令上の根拠

根拠になる法令は外為法25条の第4項であり、下記の通りです。

外為法25条の第4項

居住者は非居住者との間で、国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める外国相互間の貨物の移動を伴う売買、貸借または贈与に関する取引を行おうとするときは、・・・経済産業大臣の許可を受けなければならない

許可申請の要件

取引の仲介を行う者が居住者であること

根拠である外為法25条の第4項の冒頭に『居住者は』とあります。取引を仲介する者は居住者が対象となっています。

居住者とは、要約すると下記の通りとなります。

居住者は、人だけでなく法人も対象となります。

・日本人の場合 ⇨「日本に住んでいる人」「日本の在外公館に勤務する人」
・外国人の場合 ⇨「日本の事務所に勤務する人」「日本に入国後6ヶ月以上経過している人」
・法人の場合  ⇨「日本国内の日本法人」「外国法人の日本にある支店」「日本の在外公館」

居住者に該当しない者は非居住者となります。

居住者の定義の細部については

>>【徹底解説】技術提供の規制(安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)対策)

でご確認ください。

はかせ
はかせ

試験に頻繁に問われる注意が必要なこととして、「海外にある日本企業の支店」の扱いがあります。

海外にある日本企業の支店は、居住者・非居住者の区分でいうと非居住者です。

しかしながら、

仲介貿易取引では支店はあくまで取引の事務を行うもので、日本企業等が売買、貸借、贈与の当事者であるため、支店であっても対象となります。(居住者と同じ扱いとなります。)

なお、海外にある現地法人は、海外の独立した法人なので非居住者と区分され対象外です。

貨物の種類、仕向地、用途に関する要件

許可申請の要件については省令である外為令第17条の第3項に規定があります。下記が該当する条文です。

 法第二十五条第四項に規定する政令で定める外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買、貸借又は贈与に関する取引は、次のいずれかに該当する取引とする。

 輸出貿易管理令別表第一の一の項の中欄に掲げる貨物の外国相互間の移動を伴う当該貨物の売買、貸借又は贈与に関する取引

 輸出貿易管理令別表第一の二から一六までの項の中欄に掲げる貨物の外国相互間の移動を伴う当該貨物の売買、貸借又は贈与に関する取引(当該取引に係る貨物の船積地域又は仕向地が同令別表第三に掲げる地域であるものを除く。)であつて、次のいずれかに該当するもの

  当該取引に係る当該貨物が核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれらの散布のための装置又はこれらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機であつてその射程若しくは航続距離が三百キロメートル以上のもの(ロ及び第二十七条第二項において「核兵器等」という。)の開発、製造、使用又は貯蔵(ロにおいて「開発等」という。)のために用いられるおそれがある場合として経済産業省令で定める場合に該当する場合における当該取引
  当該取引に係る当該貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがあるものとして経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けた場合における当該取引

条文が長いので、整理して簡単にまとめますと許可が必要な仲介は下のようになります。

下記のいずれかに該当する場合は許可が必要となります。

・武器(輸出令別表第1の1項の貨物)の取引を仲介する場合

・輸出令別表第1の2〜16項の貨物で、Aグループ(輸出令別表第3の地域)を除く地域を仕向先とした取引で、大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれがある取引を仲介する場合

・輸出令別表第1の2〜16項の貨物で、Aグループ(輸出令別表第3の地域)を除く地域を仕向先とした取引で、経済産業大臣からインフォーム通知を受けた場合

上記の3つケースにおいて許可が必要となります。

はかせ
はかせ

仲介貿易取引の対象は、条文にもある通り、『外国間相互』となっております。

外国間相互とは、いわゆる異なる外国の間における取引ということです。

中国、香港、マカオは別の国として扱いますので注意してください。

輸出令別表第3の地域

Aグループと言われる地域であり、少し前まではホワイト国と呼ばれていた地域です。

アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国

インフォーム通知 参照:経済産業省公式サイト

貨物の輸出や技術の提供について、大量破壊兵器等の開発、製造、使用又は貯蔵に用いられるおそれがある又は通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがあると経済産業省が判断した場合に、経済産業大臣から、大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれがある又は通常兵器の開発等に用いられるおそれがあるものとして許可申請をすべき旨、文書にて通知されるものです。(インフォーム通知)
  通知を受けた事業者は、当該貨物を輸出又は技術を提供する場合には、事前に申請が必要となります。経済産業大臣の許可がない限り、当該貨物の輸出や技術の提供はできません。 

輸出令別表第1の貨物について確認したい方は

>>【徹底解説】貨物の規制(安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)対策)

をご覧ください。

はかせ
はかせ

許可申請が必要な要件は、高い確率で試験で問われるので確実に覚えましょう。1項品目は仕向地に関係なく許可が必要。2〜16項品目は条件によっては許可が必要です。16項のキャッチオール規制の品目も対象として入っています。

外国間等技術取引

仲介貿易取引は、貨物の取引を規制するものです。

一方で、外国間等技術取引は、『技術』の取引を規制するものになります。

対象技術、仕向先、用途などの許可申請の要件は類似しています。

根拠となる法令は外為法第25条の第1項であり、下記の通りです。

第二十五条 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造若しくは使用に係る技術(以下「特定技術」という。)を特定の外国(以下「特定国」という。)において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者又は特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者は、政令で定めるところにより、当該取引について、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

今回は、『仲介貿易取引・外国間等技術取引』について解説しました。

なお、本サイトでは他にも安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)の試験範囲の解説記事を掲載していますのでご確認したい方は

>>【完全版】安全保障輸出管理実務能力認定試験(STC Advanced)対策(試験概要と試験範囲全ての解説)

をご覧ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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