こんにちは。*くろみー*です。今回は、生物学の初歩的なことですが、いまいちよく理解されていないゲノムと遺伝子とDNAの違いについて解説します。定義を理解せずに使われていることが多いので、逆に混乱している方もいるかと思います。この記事を読んでいただいてスッキリしていただければ幸いです。
『ゲノム』と『遺伝子』と『DNA』の違い
結論
結論は、「DNAは遺伝情報(生物の設計図)が詰まった物質」、「遺伝子はDNAの中の人体の設計図に相当する部分」、「ゲノムはDNAが持っている全ての遺伝情報」のことです。
DNAは物質の名前で、遺伝子は部分のことで、ゲノムは情報のことを指しています。
それでは細かい説明をしていきます。違いを理解できた人はこの先は細かい説明ですので、興味のある方のみ読んでいただければと思います。
小さいところから話をした方がわかりやすいと思ったので、DNA→遺伝子→ゲノムの順番で解説していきます。
DNAとは
DNAとは、デオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleic Acid)の略です。多くの生物の遺伝情報を記録している高分子生体物質のことです。高分子というのは、大きな分子のことです。
DNAの構造は、デオキシリボースとリン酸からなる骨格に4種類の塩基がくっついている構造をしています。人間のDNAは、これが二つ合体して、二重らせん構造をとっています。

上のイメージの太いところが骨格の分で、デオキシリボースとリン酸で作られています。太い線の間にたくさんの細い線がありますが、それが塩基の部分です。2つの塩基が結合して、1本の細い線になっています。塩基はこのように2つで対になっているので、塩基対(えんきつい)と呼ばれます。
DNAはこんな感じで、ものすごい長い物質です。人間のDNAを伸ばして、一直線に並べると、全長約2メートルになるそうです。そして、人間のDNAの塩基対の数は、なんと30億個です。
じゃあ、遺伝情報はどこに入っているのかというと、この塩基の並び方こそが遺伝情報なわけです。この塩基の並びは「塩基配列」って呼びます。
ちなみに、全長約2メートルのDNAはどこに入っているかというと、人間の体にある約60兆個の細胞の中に全部入っています。細胞の中に核がありますが、核の中の染色体にあります。染色体は、タンパク質にDNAがグルグルと巻かれた構造をしています。生物の体はDNAだらけですね。
遺伝子とは
遺伝子は、DNAの中の人体の設計図にあたる部分という説明をしました。DNAの中には約30億個の塩基対がありますが、全てが人体の設計図というわけではないです。というより、DNAの中で人体の設計図に当たる部分はほんのわずかで、全体の数%です。そしてその数%は一箇所に固まっているわけではなくて、DNAのいろんなところに散らばって存在しており、約20000カ所と言われています。この約20000カ所が遺伝子ということですね。
余談ですが、じゃあ、遺伝子以外は何?と疑問に思われるでしょう。ここはまさに先端研究分野で、わからないことだらけです。DNAには未開の地がたくさんあるんですね。
補足しておくと、人のDNAの塩基配列自体は全部分かるんですよ。シーケンサーという素晴らしく便利な装置がありますので、それを使えば、DNAの塩基配列はわかります。塩基配列って塩基の並び方という説明はさっきしましたが、並び方自体は分かってもその意味するところがわからないのです。塩基配列=暗号のようなイメージです。今、研究者のみなさんがせっせとその暗号を解読しているわけです。
ゲノムとは
DNA、遺伝子と解説してきましたが、最後にゲノムです。ゲノムはDNAがもつ遺伝情報の全てという説明をしましたが、ここまで読んでこられた方は大体ゲノムの意味を理解できると思います。
DNAは遺伝情報を含んでいる物質で、その中には人体の設計図に当たる遺伝子という部分がある、その一方で、全く分かっていない未開の部分もありますと説明してきました。
ゲノムとは情報のことですので、DNAがもつ全ての情報です。
ゲノム解析って言葉がありますが、まさにDNAがもつ遺伝情報(ゲノム)の謎解きということですね。
今回はゲノム、遺伝子、DNAの違いを解説しました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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