
『読書を通じて知ったことは知って終わりではなく、本の主張に対して自分なりの考えを持ち、自分にあった形で生活や仕事に取り込み、人生をより豊かにすることが重要です。』
このようなポリシーに基づき、このページでは本を読んで思ったこと、考えなどを好き勝手に記しています。
本選びの参考にしてください。
今回は『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』(新潮社)を読みましたので好き勝手に感想を書いていきたいと思います。
著者は元陸上幕僚長 岩田清文氏、元海上幕僚長 武居智久氏、元航空自衛隊補給本部長 尾上定正氏、元国家安全保障局次長 兼原信克氏です。
台湾有事にあたって日本が抱える課題が本当にたくさん書いてありました。
正直、一般の文庫として販売して、日本の安全保障上、大丈夫か心配になってしまいましたが、安全保障の要職につかれていた方が書かれているので大丈夫なのでしょう。
- 本を読んで思ったこと
- 台湾の価値とは。なぜ米国は台湾を守るのか。なぜ中国は統一を目指すのかについて
- 防衛出動は原則、国会の事前承認が必要。
- 住民の避難は強制できない。どのようにして住民の安全を確保するのかについて
- 台湾や中国の在留邦人の保護の問題について
- 日本のサイバー攻撃に対する態勢はまだまだ不十分
- 日本国内の在留する中国人は約76万人
- 経済安全保障の一丁目一番地は安全保障に関連する技術を育成すること
- 安全保障に関することでも自治体が拒否権を持っている?!
- 日本の法律はポジリスト(やって良いことをリスト化)なので柔軟な行動が取れない
- 日本が中長距離の反撃ミサイルを持ったとしても日本は好き勝手に打てない?!
- 自衛隊の活動にインフラは重要
- 台湾有事では、日本と米国では優先順位が異なる。
- 戦時の多国間枠組みについて
- 台湾有事は世界経済に及ぼす影響が甚大
- 台湾有事で日本は何ができるのか。
- 台湾有事はどのように終結するのか?
本を読んで思ったこと
台湾の価値とは。なぜ米国は台湾を守るのか。なぜ中国は統一を目指すのかについて
台湾は李登輝総統の時代、経済の発展と自由で開かれた民主主義国家を目指した政策を行いました。これは中国の一党独裁の考え方とは相反するものです。李登輝の考えに近い世代が今の20代30代の世代になります。一方前総統の馬英九の中国よりの考え方を支持する国民も多いため世論は二分しているといってよいでしょう。現在の台湾は李登輝の考えと同じ台湾の独立を目指す蔡英文総統がトップですので民主主義を掲げ中国共産党と戦う姿は民主主義陣営のシンボルマークとなっています。また半導体産業分野ではTSMCがあり世界産業にとっても欠かせない高いソフトパワーを有した国と言えます。
台湾の安全保障上の価値はいくつかありますが、大きくは、中国の太平洋の進出を抑制できるということです。中国が太平洋に進出するにはバシー海峡を経由する必要があるが、中国が台湾を統一すると中国は隠密かつ自由に行き来できることになります。また、台湾の東側は山脈があり4000m弱の標高を有する山々が連なっています。太平洋を見下ろすことができる絶好の地形と言えますので、太平洋広域に警戒監視網を広げることができます。次に日本のシーレーンの安全確保の観点からも台湾の価値は大きい。これは同じシーレーンを使用する韓国も同様の立場ではないでしょうか。次に緩衝地帯という観点では、日本は海洋国家であり海に囲まれているので地政学的にも海というバッファーがあるのですが、中国と日本の間に台湾があるのは安全保障上のバッファーという観点で極めて存在意義がある。台湾が中国ということになると中国という大国と直接対峙することになります。
中国国内事情の側面では少数民族のアイデンティティを認められないという事情があるとのことです。中国は56の民族があり、内55の少数民族は全人口の約10%を占めているとのことです。台湾のアイデンティティを認めることは少数民族のアイデンティティを認めることに繋がりかねず中国共産党が掲げる中国統一において少数民族の統治という観点からも影響があると思われます。
米国のプレゼンスという観点で、現在は日米同盟、米韓同盟、台湾やフィリピンへの関与とアジア太平洋地域において大きなプレゼンスを築くことができています。要するに米国の存在により中国が押さえつけることに成功しているということです。台湾を中国に統一されれば、米国のアジア太平洋地域におけるプレゼンスは落ち、日米同盟の効力も下がることでしょう。また世界各国の米国への信頼度も低下することから米国の外交政策面でも影響が出てくる可能性は大きいです。
防衛出動は原則、国会の事前承認が必要。
いとまがない場合はその限りではないと言うことですが、防衛出動をかける場合は原則国会の事前承認が必要ということです。日本が攻撃されるとなると初っ端はミサイル攻撃であることは間違いないと本書にも書かれておりましたが、北朝鮮の弾道ミサイル発射と同じようにほとんど兆候がない状態で多数のミサイルが飛来してくるわけですから、着弾してから国会の事前承認を得るというのはほぼ非現実的であると言わざるを得ないのではないでしょうか。
中国の軍艦が領海に侵入してきただけで自衛隊が自衛権に基づく武力を行使することはできないとのことですので、攻撃されない限りは追尾して領海から出ていくように警告を続けることになります。中国の軍艦から攻撃を受けて、初めて交戦ができるわけですが、この際、防衛出動が発令されていないと自衛権に基づく武力行使ができないことになります。中国の軍艦は頻繁に南西諸島を経由して太平洋に進出しているわけですから、いつ領海に侵入されても不思議ではないし、領海に入ってすぐに攻撃を仕掛けてきた場合は海上警備行動の武力行使の範疇で対応することになりますので限定的な武力行使となってしまいます。仮に中国軍艦の攻撃が本格的なものであった場合、海上自衛隊が自衛権に基づいて交戦するためには原則、国会の承認が必要となるため、現場の指揮官は法律上の制約により適切な軍事的対応ができない可能性が高いでしょう。本書でも事前に防衛出動を発令して何が起こっても対応できるようにすべきとありましたが、攻撃する側の意志によって攻撃に要領や時期が決まるため事前に防衛出動を発令しておくのは現実的に無理なのではないかと思ってしまいます。
住民の避難は強制できない。どのようにして住民の安全を確保するのかについて
日本が台湾有事により戦争に巻き込まれた場合、当然住民に被害が及ぶ可能性が出てくるため住民の避難は重要です。住民の生命と財産の保護の責任は自治体にあるため、総務省が主として対応することになるが、自治体にその能力があるか、その準備が十分かと言えば全く足りないのではないでしょうか。自衛隊の最優先事項は国土防衛ですので、国民保護の優先順位は自衛隊からすれば下がることになります。
住民の避難は強制ではないので呼びかけはするものの住民の意思で避難しないという選択を取ることもできるようになっている。島の住民であれば島外に避難するのが最も安全だが、島外非難を拒否した住民を島内で安全に避難させる方法としては国際人道法のジュネーブ条約に基づく非武装地帯を設定し、そこに避難させて非戦闘員として保護することが可能とのこと。このような危険な状況では自治体が国民保護できる可能性は低いため、陸上自衛隊が住民の避難を担うことになりそうだ。
大東亜戦争における沖縄戦を例に挙げた国民保護に関する興味深い記述がありました。沖縄戦が始まる3ヶ月前に島民に島外避難を知事が勧めたとのことですがほとんど避難する島民はいなかったとのことです。その後、那覇の大規模な空襲があって焼失して危険な状況になっても島外避難したのは島民全体の7分の1だったそうです。なぜ島外避難できる状況にも関わらずしなかったのかという原因を、避難先での生活保障への不安が大きな原因と考察してありました。避難は住民の意思である以上、避難することへの抵抗感の払拭は盲点となりやすいが重要であると思いました。
台湾や中国の在留邦人の保護の問題について
先島諸島の住民の避難についても問題ですが、さらに問題になるのが台湾や中国の在留邦人を如何にして守るかという問題です。最近ではアステラス製薬の社員がスパイ容疑で中国当局に拘束されるという事件が起きましたが、台湾有事ではこのような事件よりもより深刻なことが起きる可能性が高いでしょう。台湾国内に在住する日本人は中国からの武力攻撃により被害を被る可能性がありますし、中国国内に在住する日本人も拘束されるなどして、日本との外交交渉のカードとして使用される可能性は高いのではないでしょうか。中国は2014年にスパイ防止法を制定し、中国の国家安全部が中国国内のスパイの取り締まりを行うことになっています。スパイの取り締まりにおいては逮捕処罰を行うことが可能であり、可能な処罰としては永久追放、懲役刑、死刑があると言われています。過去に英国の元外交官がスパイ容疑で逮捕された際は懲役10年の実刑が判決された事例があります。最高刑として死刑があるが、処罰はその国との外交関係や国際情勢などの外因的な状況により十分変わり得るため、台湾有事においては日本人が逮捕され死刑が宣告されるといった可能性も十分あり得るということだと思います。アステラス製薬社員が中国当局に拘束されるに当たっては、具体的にどのような行為が法律に抵触したか等の説明は一切ないです。すなわち、スパイ行為の有無に関わらず拘束逮捕され処罰される可能性があり得るということです。中国における活動はそのようなリスクがあることを広く周知すべきだと思います。
在留邦人の輸送においては、輸送する者のスクリーニングも重要になる。万が一、危険な者や敵の戦闘員などが入り込んでいると非常に危険であるため、このような観点からも一重に輸送といっても飛行機や船に乗せるというだけの話ではなく、とても時間を要する状況になりそうだ。
日本のサイバー攻撃に対する態勢はまだまだ不十分
海外からのサイバー攻撃に対する対応できる組織は防衛省ではサイバー防衛隊があるがこれは主に自衛隊に対するサイバー攻撃のみを対象として防御できるため限定的にしか機能できない。またサイバー防衛隊はサイバー攻撃を行った組織等を特定してそこに攻撃を仕掛けて無力化するという能力を持ち合わせていないため、ひたすら行われるサイバー攻撃に対して防御するだけであまり効果的ではない。そのため、サイバー攻撃の発信源に反撃して攻撃を止める攻勢防御(アクティブディフェンス)を法的に可能にすることが重要とのことでした。
情報戦の色が濃いとは思うが、フェイクニュースなどによる世論誘導も脅威になり得る。最近では皆スマホを持っておりほぼリアルタイムに情報を得ることができる。そしてTwitterやLINEなどによりニュースは一気に広がるという情報伝達速度が恐ろしいほど発達した。特にAIを使ったディープフェイクによるフェイクニュースは偽物かどうか見破ることができない精度に既になっており世論を十分に誘導可能だと思います。このようなフェイクニュースなどを国全体として如何にして防ぐか対処するかが今後とても重要になるでしょう。
日本国内の在留する中国人は約76万人
日本にはとても多くの中国人が住んでいます。また中国人旅行客の数も凄まじく多いです。日本にはスパイ行為を取り締まる法律はないため、在留中国人に中国共産党員、人民解放軍等の者がいても全く不思議ではありません。平素から日本において情報収集し日本との有事に備えており、本書に書かれているような日本の課題についても全て把握されているといっても過言ではないでしょう。
経済安全保障の一丁目一番地は安全保障に関連する技術を育成すること
安全保障に関連する技術は、ハイリスクすぎて企業が手を出せない技術が多い。要は失敗するリスクが高く、技術開発に長期間を有するということだ。そのような技術分野は、野放しでは成長しないため、国がリードして開発を進めるべきと本書に書かれてあった。また米国は国防省が巨額の研究開発予算を持っており、安全保障に関連する技術に日本とは桁違いの予算が投資されている。例えばAIや量子などの先端技術分野がこれにあたる。私の感想としては言っていることは分からないでもないが、米中が巨額を投資している分野に日本が予算を投資しても勝ち目はないのではないかと思ってしまう。近年は技術が先行して戦いにイノベーションを起こすのが主流であり、画期的な技術が発見されてそれが軍事技術に使用されるようになるケースがほとんどだ。GPSなどは軍用に開発したものが民間に流れて普及したがそれはベトナム戦争時代の話で今では状況が違うのではないかと思う。日本において今では研究開発予算は重点分野に重点投資という形になってしまったが、一昔前は違い、科研費という形で全く注目されない技術にも研究が継続されるように均等に研究開発予算が投資されていた。その結果、誰も予想しなかった画期的な発見や発明がなされ、これまでに日本からもノーベル賞受賞者を多数輩出している。今注目されている技術にいくら投資しても一番に成り上がることはできないので、それ以外の技術の新規発見に投資するのが日本の研究開発のあり方ではないかと考える。
安全保障に関することでも自治体が拒否権を持っている?!
国家の命運を分ける安全保障に関することでも自治体が拒否権を持っているとのこと。具体的にどのようなことに対する拒否権かは本書では言及がなかったが、普通に考えたら拒否権がまかり通るというのはいかがなものかと思う。国と自治体とでは視点が違うわけで、国は国家全体の安全保障の観点から判断しているのに、自治体がどうだからというような地域の視点で国家の安全保障に関する活動をストップさせることができる現在の状態は非常によろしくないのではないでしょうか。
日本の法律はポジリスト(やって良いことをリスト化)なので柔軟な行動が取れない
これからは平時と有事の間のグレーゾーンの事態への対応が大事だが、どう対処すれば良いか分からないような状況が多く生起する可能性があり、法律で認められていることしか実施できず、それ以外は全部できないということでは非常に対応が難しいとのことでした。
日本が中長距離の反撃ミサイルを持ったとしても日本は好き勝手に打てない?!
中長距離ミサイルで中国本土内を攻撃するということは、中国の核の使用をエスカレーションさせることになるため、攻撃目標は綿密に日米で協議しておく必要があるとの見解を政府見解ではないが、米ランド研究所が述べているとのこと。要するに米国は米国の思うように戦況をコントロールしたいわけで、日本が日本だけの必要性から中国本土に反撃するというのは米国の合意なしでは認められない可能性があるということだと思います。台湾有事になって日米間で話し合うのでは遅いと思いますので、平素から合意形成し計画を立てておくべきではないでしょうか。
自衛隊の活動にインフラは重要
ある特定の条件を満たすと活動するロジカルボムというマルウェアがあるとのこと。ロジカルボムが大量にインフラシステムに仕掛けられていた場合、特定の日時に一気にインフラが障害を起こして大停電ということも現実にはありうるらしい。自衛隊の基地駐屯地や病院などの重要施設には当然非常用電源が設置されているだろうが、一部の機能が民間インフラの停止で麻痺する可能性は考えられるだろう。また島では通信として海底ケーブル、電力では送電線が重要だがこのようなインフラ上の重要設備の防護も行われておらず、課題として残っているとのことです。
台湾有事では、日本と米国では優先順位が異なる。
日本と米国では作戦上の優先順位が異なることが日米連携での問題点となることを指摘している。日本の最優先事項は日本の領土を守ることであるので、台湾に近い与那国島や尖閣諸島の保持というところが最優先事項となる。一方、米国は与那国や尖閣諸島の優先事項は低く、台湾の防衛の支援というところが最優先となる。そこに日米間の大きな齟齬が生じる。優先順位に従い戦力を配分することを考えると、仮に尖閣諸島や与那国島に中国が侵攻した場合は、日本独自で作戦を遂行することになる可能性が高い旨が本書で指摘されていた。
中国にとっては台湾単独の抵抗に打ち勝つことは容易いことであるが、日米が関与してくると非常に厄介ということは間違いない。日米の戦力を分散させる観点から尖閣諸島や与那国島に侵攻が及ぶ可能性が指摘されていたが、十分にあり得るのではないかと感じた。
米国は日本に台湾防衛への直接的な協力、すなわち日米台による中国との武力交戦を要求してくる可能性があることを指摘していた。中国は将来的に第2列島線への進出、すなわち太平洋への進出を目標としているが、現状として太平洋への進出は日本、台湾、フィリピンで蓋をされているような状態です。もし台湾が中国の領土になった場合、中国は台湾に太平洋進出のための大きな拠点(軍港や航空基地)を築き上げ、太平洋まで中国軍の活動領域を広げて、影響を拡大すると思われます。そうなった場合、日本のシーレーンは常に脅かされる状態となり、また日本の太平洋側も中国の脅威に脅かされることになります。台湾を中国に取られることは日本の国益に大きく関わることであって、日本は将来をかけて台湾防衛に協力することは意義のあることであり当然のことであるように思うが、現行の法律上、それが本当に可能かは疑問が残ります。日本は直接的な軍事介入はせず、米軍が戦う後方支援のみ実施しますでは、もはや済ますことはできないのではないでしょうか。
また米国においては台湾への介入について積極派と消極派に二分されており、台湾への介入が米国にとってリスク冒すほどの価値がないと思っている人が特定数いるということです。米国が消極的な姿勢を取った時、日本が如何に対応するかについても大きな議論の一つになると思います。
戦時の多国間枠組みについて
本書では本当に台湾有事に介入するのはオーストラリアと米国のみということでした。多国間枠組みはFOIP、QUADがあり多くの国が参加するものの、そのほとんどは機能しない可能性があるとのことでした。ただ、中国は多くの国を味方につけたい、多くの国から信頼されたいと思っている国らしく、多国間枠組みで平素から仲間を作っておくことは抑止になりうるとのことでした。中国が本当にそのように考えているのかは謎ですが。
台湾有事は世界経済に及ぼす影響が甚大
国の経済力を表す一般的な指標としてGDP国内総生産があるが、台湾有事はGDP1位の米国、2位の中国、3位の日本が関与する事態であるため、株価大暴落といった世界経済に甚大な影響を及ぼす。また日本は海洋国家であり多くの資源を海外からの輸入に依存しています。外国からの輸入を安定的にするためにはシーレーンの安全性の確保が非常に重要なのですが、日本のシーレーンに台湾近郊の海峡が含まれます。中国と台湾の間の台湾海峡と、台湾とフィリピンの間のバシー海峡です。台湾有事もしくは台湾が危険な状態になった場合、これらの海峡の安全な通行に影響が出ますので、日本への資源の輸入が大きく滞る可能性があります。台湾周辺の海域の危険が増すことにより船舶保険が非常に高額になったり、海峡の通航に高額な手数料が課せられたりすると、日本国内の商品の価格が高騰する可能性は高いのではないでしょうか。例えばガソリン価格や石油製品の高騰は目に見える形で高騰することが予想されます。このような商品価格の高騰は国民生活に直接的に打撃を与えるものですから国民の不満は高まり、台湾有事への日本の積極的な関与を阻害する要因となるかもしれません。
台湾有事で日本は何ができるのか。
米軍が台湾の防衛支援で拠点とするのは沖縄の米軍基地であろう。加えて自衛隊の基地、駐屯地や特定公共施設の使用についても要望があると予想される。特定公共施設の使用については日米地位協定に基づく事前同意が必要であることから、使用される可能性がある施設についてはあらかじめ見積もりできる準備を施しておく必要があるだろう。また事前同意については住民の反対等の影響もあるため、平素から理解を求める活動も必要だろう。特定公共施設は米軍の使用により軍事目標となります。通常民間施設や公共施設は軍により使用されていない場合は、国際人道法により軍事目標としてみなされる攻撃することが明示的に禁止されていますが、軍事活動として使われた場合には軍事目標となり攻撃されるリスクが高まります。そのようなこともあり住民反対や自治体による反対はあり得るでしょう。
いずれにせよ、米軍基地、自衛隊の基地等、米軍や自衛隊が使用する特定公共施設をミサイルなどの攻撃から守り機能を維持するというのは自衛隊の重要な任務の一つになると考えられる。
本書にはこれらの施設を守る際の弾切れの指摘があった。中国は大量のミサイルを保有しているためこれに対応するためには、中国国内のミサイル発射基地を叩くのが効果的だが現時点では自衛隊はそのような兵器は保有していないので米軍に要求するしかない状況です。最近はトマホークの購入という話がニュースに出ていますが、ミサイル防衛能力を補完する非常に重要な武器と言えるでしょう。
台湾有事はどのように終結するのか?
戦争の終結は非常に難しい問題です。昨今のウクライナ戦争一つとっても中々戦争は終結するものではないということを実感させられます。それは戦争当事者双方の合意がないと戦争は終わらせることができないからです。ウクライナ戦争においてはウクライナはクリミア半島を含む全てのウクライナ領土を回復するまで終結に合意しないでしょうし、ロシア側はその要求はプーチン政権にとってとても許容できるものではないでしょう。
中国が台湾に武力侵攻するということは中国はそれなりの損失を覚悟の上で侵攻しているわけですから、戦争の目的を果たすまでは引き下がることはできないと思います。ましてや習近平政権は台湾の統一を明確に宣言しているわけですから、台湾の一部を統一というような中途半端な成果では戦争は終わらないと思います。中国側は台湾全てを統一するまで戦争を続けるとした場合、米台がどれだけ中国の攻撃を阻止しようとも戦争は終わることはなく継続することになるのではないでしょうか。では一体どのようにすれば台湾統一しない状態で戦争を終結できるか。それは非常に難しい問題で、中国側にこれ以上戦争を継続すると中国にとって多大な不利益を被ると思い知らせる必要があります。資源もあり、人口も多く生産力もある、そのような国の軍事力をいくら減らそうと降伏するとは思えません。そういう意味で軍事面以外で中国の意思を挫くような弱点を平素から研究しておく必要があるのではないでしょうか。
終戦時の国境線についても重要な課題となり得る。米国と台湾が求める要求と日本が求める要求は異なるが、終結は台湾と米国と中国間で実施される可能性が高く、仮に尖閣諸島などの日本の領土が中国に支配されているような状況であっても終結が合意される可能性はある。台湾有事においては日本の国益を考えて行動することが求められる。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
本サイトでは他にも好き勝手に本を読んで思ったことを書いています。
>>将来を生き抜くための”個性”の重要性:『ハーバードの個性学入門 平均思考は捨てなさい』を読んで
>>バイオテクノロジーが作り出す未来がもうそこまで来ている!:『バイオものづくりへの挑戦』を読んで
興味のある方はご覧ください。
コメント